「ピンチをチャンス」に変えられるか【主張】8月2集(生保版)

「ピンチをチャンス」に変えられるか
 いま生保が直面する経営環境は、非常に深刻で危機的なものだ。「必死の決断」が要する大ピンチだと本気で思う。
 我々の生保業界は、第二次大戦により壊滅的なダメージを受けた。それが戦後の混乱期を抜けるや否や、目覚ましい経済復興と社会変化の追い風に乗って極めて順調な発展を遂げた。「バブル経済」と呼ばれた頃には、長期資金の分野では「ザ・セイホ」と粋がる者が現れる始末であった。今では懐かしい成功体験であるが、その追い風もバブル崩壊と共に途絶えてしまい、今では反対に市場飽和に喘ぐ不況が長らく続いている。
 特に販売に関しては、ここ三十余年は停滞に近い状態と言え、これでは大きな販売組織の維持は、「壮大な無駄」にさえ見えてしまう。各社で数々の改善は試みられてはいるが、いずれも構造的な変革とまでは言えない中途半端なもので、従来方式に代わる中心軸を見出すに至っていない。
 そこに今回の新型コロナの危機である。販売の当事者が「顧客とのコンタクトまで制限されると、対面型の訪問販売は活動が実質不可能となり…」と苦しい環境状況を述べても、所詮は愚痴や言い訳でしかないと受け止め、せっかちに「ここは行動に移すしかない」と説明を途中で遮ってしまう。こんな時によく用いるフレーズが「ピンチはチャンスだ!」である。
 あまりにも多用されるので、聞く方もいささか食傷気味となり特段の感情も湧かないとは思うが、ピンチに押しつぶされ失意の底に沈む人を元気づける目的で用いるのが本来である。しかし実際には、企業内での指揮命令に際して当事者の言い訳を許さないために用いるケースが多い。すなわち上位者が「環境が悪いことは理解するが、それを何とかするのが君たちの仕事だろう、ピンチこそチャンスだ!」と権限を振りかざし当事者の言い訳を封殺するのだ。
 今回のピンチの兆しは、戦後の経済復興が終了した時点で既に現れている。その後は何とかごまかし遣り過ごしてきた構造的な問題なのだが、コロナ禍で追い詰められ遂にそれが隠しきれなくなったのが現状と捉える。
 生保経営において、保険販売が何より重要であることは、関係者の誰にも異論はないことだろう。「なにも新規に販売しなくても現在保有する契約を大事に守れば…。販売に苦労しても、その分だけ費用負担も軽くなり…」と知ったかぶりの同輩もいるが、それでは現に保有する保険の契約群団さえ維持できない。
 もはや「目先の対応だけを済ませ構造的な問題には目をつむる」手法は通用しない。またピンチが自然にチャンスに変わるはずもなく、ここは各社それぞれが「チャンスに変える」努力に励むしかない。
 「老兵は語らず、ただ消え去るのみ」と言うが、応援団の一員として、現役の方々には盛大なエールを送りたい。 (客員・岡本)